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2007年02月17日



盛岡市指定 小さな博物館
姫神焼 陶子庵
皆川禮子


 麦秋の風が立っている。東へ向かって雲が流れて、しかし同じ
雲はもう再び引き返しては来ない。昼寝の猫の夢をさまさぬ程の
蹲の水の音が、ぽつつん、かんと冴えた涼風をかすかに送り
込んでくる。轆轤を廻す作品に一段落ついたら、忘れていた指先の
痛みがしーんとぶりかえしてきた。
 私の老後は陶工として明け暮れているが、ふと、そうだ姉に電話を
いれてみよう。

「ねえ、いきなりだけど、私の発想よ、猫の歌を詠んでみない?
猫三昧、猫のまほろば、猫百態、猫づくし、猫曼陀羅・・・・。」
「それはおもしろいけど、なかなかむずかしいね。年を重ねただけで
自分の力量もほどほどで抜群とはとても言いかねるから、どうせ
漫画の域を一歩も出ないね。花鳥風月より数段むずかしい」
「それでいいのよ、葉書大のお笑い漫画、猫たちもきっと喜ぶ・

 姉は自称泣き虫の猫歌人、何とかかんとか、おだてにのって、
それもそうねと話にのってくるに違いない。そんなところが、
半ぼけ老人になりかけた老女の可愛いところ。考えてみると、
姉妹娘共、連理の枝に連なる人の家にはほとんど猫だらけ。
どうにも天下無類の猫キチ軍団の集まりで、仲良しの隣の奥様方まで
巻き込んで、ワアワアお話がはずめばモデルに事欠くことはない。
 こうして、はじめたのがこの小冊子。もしご友人の方々のお膝元に
猫たちが駆け込んでゆくご縁を得ましたらなら、どうぞ笑ってやって
くだされば幸いでございます。
 見上げれば満天の星、幸不幸は常に紙一重。殊にも小動物たちの
生命は人間の4分の1に過ぎません。この愛しい者たちと温かく
共生してこそ花の咲く地球という星は美しいのだと信じています。
気軽に猫たちのあけくれにつきあって、この仔たちからどんな心の
憩いをもらい受けたか、このかなしいまでのかすかな重さを解って
やれることこそが、共存して感じる一期一会の大切な歩みなのでは
ないかと想っています。

posted by うた子さん at 18:43| Comment(0) | TrackBack(0) | またたび通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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